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概要

広報はくば9月号

2館報はくば Vol.481◆ 文化財レスキューの活動紹介皆さんはグリーンスポーツの森に歴史民俗資料館があるのは御存知かと思います。また資料館を見学された方も多くいらっしゃると思いますが、資料館にある収蔵庫の中をのぞいたことのある方は少ないのではないでしょうか?実は、収蔵庫の中には展示室には展示されていないが、面白いもの、重要なものが納められています。現在、私たち被災建物・史料救援ネットワークは、2014年の神城断層地震で被災した資料の救出活動の延長で、資料館の整理活動を行っています。今回はこの整理活動のなかで収蔵庫の中で見つけた、興味深い資料を紹介します。【引札が一面に貼られたふすま】下の写真のものが、今回紹介する資料です。ずいぶんカラフルで賑やかな絵が継ぎ貼りされたふすまですね。この継ぎ貼りされた絵は、明治末から大正時代にかけて盛んに配られた引札と呼ばれる、商店の広告チラシです。現在もチラシは新聞等にはさまれて毎日のように私たちの手元に届けられますが、引札は年に一度お正月に商店がお得意先に配ったチラシです。そのため、恵比寿大黒が登場し、打ち出の小槌を振って金銀財宝を生み出す縁起の良い絵や、ポスターのように飾って楽しめるように美しい女性が描かれ、その横には商店の名前と取り扱う品目が記される場合が多いのです。ではそのような性格の引札が、なぜふすま一面に貼られているのでしょうか?引札を配るお店にとっては、せっかく配ってもすぐ捨てられたら意味がありません。そこで一年の略暦(簡単なカレンダー)を一緒に刷り込んだり、先ほど触れた美人画のように長い間家に飾ってもらうような工夫をしました。そのためこの時代、各家の柱や壁に引札が貼られている光景がごく普通に見られたそうです。そのなかには、趣味の人がいて毎年いろいろなお店から貰う引札を貯めておいて、よりアートなインテリアにする人もいたのでしょう。このふすまはそのような趣味を持った人によって作られたものと思われます。現在の私たちにとっては、このカラフルな絵を楽しむのはもちろんのこと、明治大正期にこの地で商売をしていた商店の名前を知ることができるのも魅力です。引札に覆われた賑やかなふすまはこの秋の文化祭で皆さんの前にお披露目される予定ですので、ぜひ実物をご覧になってください。なお、資料館の収蔵資料の整理活動は月に一度のペースでグリーンスポーツの森で行っています。これまでずっと収蔵庫に眠っていた資料を取り出し、ほこりを払って写真をとっていく作業です。次回は9月25日(月)を予定しています。御興味のある方はぜひ一緒に活動してみませんか? 時にはこのような不思議な資料に出会えるかもしれませんよ。(被災建物・史料救援ネットワーク 細井雄次郎)