白馬村がUN Tourismベスト・ツーリズム・ビレッジに選出されました

白馬村がUN Tourismベスト・ツーリズム・ビレッジに選出されました
ベスト・ツーリズム・ビレッジとは
ベスト・ツーリズム・ビレッジは、持続可能な開発目標に沿って、観光を通じて文化遺産の促進や保全、持続可能な開発に取り組んでいる地域を認定する2021年から開始された*UN Tourism(国連世界観光機関)のプロジェクトで、人口15000人以下の自治体や地域を対象としています。
この取組は、観光を通じて、地域の景観、知恵、生物・文化の多様性、産業といった、地域が持つ様々な側面の価値の向上、保護を促進することを目指し、地域の優良事例を集めることを目的とし、広く知られている文化及び自然資源を有し、地域コミュニティに根差した価値観の保全に努め、また経済・社会・環境の全ての側面においてイノベーションと持続可能性に明確に取り組んでいる、優れた地方部の観光地を表彰するものです。
https://www.unwto.org/tourism-villages/en/
日本版ベスト・ツーリズム・ビレッジ連携協議会行動理念
私たちは世界観光倫理憲章の精神に基づき、またベスト・ツーリズム・ビレッジ(以下 「BTV」という。)の目的に照らし、文化的及び自然的資源を継承するとともに、地域社 会に根差した価値観、産品、ライフスタイルを維持・促進し、経済、社会、環境のあらゆる 側面において観光の持続可能性を追求します。また、地域の景観、知恵、生物・文化の多様 性、産業を活かしつつ、観光をイノベーション、地域の発展、住民のウェルビーイングの原 動力とすることを目指します。BTVネットワーク参画地域が連携して活動することで、持 続可能な観光をリードする存在としてブランド力の向上に努めます。
1.地域にある地域/国/国際レベルで認められている、有形・無形の自然・文化資源を守り、次の世代に継承します。
2.地域の文化資源の保全と振興に取り組み、その独自性と真正性を追求します。
3.中小企業を含めた観光事業の発展、起業家精神及び投資を促進し、経済の持続可能性を高めます。
4.女性や若者、障がい者等の教育訓練・雇用など、地域での社会的包摂と平等の促進に取り組みます。
5.自然資源を保全し、観光による環境への負荷を最小限に抑えるための取組を実施することにより、環境面の持続可能性を追求します。
6.市場アクセス、マーケティング、プロモーション、イノベーション、商品開発、質の向上を通じて、バリューチェーンと地域の競争力を強化します。
7.観光を地域づくりの戦略的な柱とし、官民連携、地域連携を推進するとともに、地域住民の観光政策への参画を図り、継続的なモニタリングを行うなどにより、観光について適切なガバナンスを行います。持続可能な観光を地域の観光戦略の軸として位置付けます。
8.地域の福祉、事業の発展、観光客の体験を向上させる交通及びインフラの十分な整備に努めます。
9.住民と観光客を守るための公衆衛生、安心・安全の確保に向けた体制を整えます。
10.地域を訪れる観光客に対し、地域の観光の景観、知恵、生物・文化の多様性、地域に根差した価値を尊重することを呼びかけます。
11.他のBTVと連携して、互いの知見・経験を共有し、継続的に学び合いながら、連携して観光に携わる人材の確保・育成、情報発信等を行うなど、取組を発展させていきます。
12.BTVを契機として住民のシビックプライドを醸成するとともに、観光を通じた住民のウェルビーイング向上に努めます。
UN Tourismとは
国連世界観光機関(UN Tourism)は、観光における国際主導機関で、理念として観光を通じた豊かな社会の実現と各国の相互理解の促進を掲げ責任ある持続可能な観光の促進を目的とした国際連合の専門機関です。160の加盟国及び6地域、500以上の賛助加盟員で構成されています。
ベスト・ツーリズム・ビレッジの選出状況
ベスト・ツーリズム・ビレッジの選定基準(大項目)
【地域振興の牽引力として観光を推進する上での地域の主な目標】
ベスト・ツーリズム・ビレッジ認定にあたり、白馬村として「持続可能な観光地経営」「ユニバーサルデザイン」「ウェルビーイング」の3つを主な目標としました。
【観光分野において地域が推進している最も創造的で革新的な取組】
ベスト・ツーリズム・ビレッジ認定にあたり、以下の取組が大きく評価されました。
■地域資源を活かす開拓者精神やおもてなし精神の継承
白馬村では、山岳ガイドや農家を営む地元住民の家に登山やスキーの旅行客を泊めたことで、日本の民宿発祥の地として民宿文化がスタートし、自家農園で栽培したお米や野菜を使い郷土食を宿主自身が提供してお客様に説明するなど、ローカルで家庭的なおもてなしによって多くの観光客に親しまれてきました。
またスキー場のコースも1900年代半ばに地元の青年を中心に自ら切り拓き、半世紀後にはそのコースで長野オリンピックが開催され、現在ではアジア最大のスキー場になっています。
そうした地域資源を活かす開拓者精神やおもてなし精神を、国際リゾートとなった現在も住民が持ち続け、地産地消の推進や自然環境の保全、地域文化を伝承しながら、世界中からお客様を迎え入れ、地元高校生のフィールドワーク等を通じてその精神を次世代に伝えています。
■観光資源として評価された豊かな農山村文化と景観
選定基準の大項目のうち「文化資源と自然資源」「文化資源の振興と保全」において、塩の道沿線をはじめとした里山の史跡や歴史的建造物、文化が評価されたことから、美しい自然景観はもちろん、「山岳」「民宿」「農業」「スキー」「里山文化」といったものが、白馬村の優れた観光資源として国際的に評価されたものと言えます。
村民、事業者、観光客、行政が一体となって、豊かな自然を守るとともに、これら資源の素晴らしさや大切さを理解し、保全や振興、継承していくことで、持続可能な観光地経営の実現化が図られます。
村民のいのちである白馬村の自然風土
白馬村は昭和54年11月1日に制定した村民憲章にて、「白馬岳・姫川に象徴される豊かな自然風土は、わたくしたち白馬村民のいのちです。」と記しています。
白馬村の自然風土は、村民にとっていのちであると同時に世界に誇る資産です。
この自然風土を、世代を越えて繋ぎ続けていける観光地であることを何より大切にしています。
【白馬村第5次総合計画と白馬村観光地経営計画】
白馬村では2016年から2025年までの第5次総合計画において、産業の分野で「世界水準を意識した観光の村づくり〜競争力と持続可能性を高める観光地経営」を掲げています。
また白馬村が観光地として目指すべき姿や進むべき方向性、実施すべき施策・プロジェクトを明示するとともに、これらを着実に実行していくための体制・方策を取りまとめた観光地経営計画において理念として以下を示しています。
【世界水準を意識するにあたって】
ベスト・ツーリズム・ビレッジの選出にあたり、国際的に評価された内容について前述しましたが、以下に選定基準の大項目である9項目を更に細分化した基準項目の中から、白馬村が評価された具体的な取組等をピックアップして記載します。
それぞれの立場・役割で世界水準の持続可能な観光地を意識する上で、参考にしていただきたいと思います。
文化自然資源
地域/国/国際レベルで認められている自然・文化資源(有形・無形)
文化資源の振興と保全
文化資源の振興・保全のための政策、施策、取組を普及・促進
・青鬼地区の振興・保全活動
・民宿発祥の地としてのホスタピリティの継承と観光人材育成
・登山の安全管理と登山文化・歴史の継承
経済分野の持続可能性
地域が実施している政策、施策、取組の関連情報
・産業連関表の作成と域内経済循環推進への活用
・白馬村観光局独自の村内宿泊施設共有予約サイトの運営及びマーケティング活用
・観光と農業が連携した地産農産物の消費推進
社会分野の持続可能性
観光セクターにおける就労を促進するための政策、施策、取組の普及・促進
・観光人材育成を目的とした白馬高校の国際観光科の設立
・多言語対応可能な書類作成や職員の配置を通じた外国人労働者の就労支援
観光において脆弱な人々(少数民族の先住民や障がい者といった社会的弱者)への機会を促進する政策、施策、取組の普及・促進
・社会福祉法人と地域や観光事業者が連携した、障がい者の社会参画の機会創出
・白馬村を会場とした障がい者のスポーツ大会の開催
人材育成、教育、能力開発、特にイノベーションの推進とIT技能の格差解消に重点を置いた政策、施策、取組の普及・促進
・公立学校のタブレット導入等ICT教育への積極的な取組
・シニア向けスマホ講座等デジタル・ディバイド(情報格差)解消の取組
・役場へのデジタル専門人材の配置と庁内横断プロジェクトチームによるDX推進
特定の支援を必要とする観光客がアクセスしやすくするためのバリアフリー化を推進する政策、施策、取組の普及・促進
・エイブル白馬五竜のゴンドラリフトや高山植物園のバリアフリー化
・各種案内の多言語表示と、英語の堪能な観光従事者や地域住民の充実
社会的持続可能性の分野で地域が実施している政策、施策、取組
・「多様であることから交流し学びあい成長する村」を基本理念とした第5次総合計画の策定及び実践
・あらゆる人が認め合い尊重し、対等な関係で共に生きていく社会を目指す「白馬村多文化共生条例」の制定及び実践
・障がいの有無にかかわらず、社会で活躍できる地域を目指す「白馬村障害者活躍推進計画」の制定及び実践
環境分野の持続可能性
自然資源の保護・保全のための政策、施策、取組の普及・促進
・グリーンパトロールの常駐
・レッドデータブックの策定と環境保全の取組
・環境に配慮した形での農業振興
気候変動に対応するための政策、施策、取組の普及・促進
・気候非常事態宣言・ゼロカーボンシティ宣言の発出
・再生可能エネルギーの電力によるスキー場のリフト運行
・EV購入補助金や省エネ・断熱住宅へのリフォーム補助金等のゼロカーボン推進支援
・住民参加型のワークショップ形式による学校の教室の断熱改修
観光における使い捨てプラスチックを削減するための政策、施策、取組の普及・促進
・宿泊事業者連携での使い捨てプラスチックアメニティゼロ活動
・村内カフェ連携でのマイボトル優遇やリユース容器共有などの使い捨てプラスチック削減
地域の環境持続可能性において実施している政策、施策、取組
・日本国内の町村初の気候非常事態宣言の表明
・ゼロカーボンシティ宣言の発出
・ゼロカーボンビジョン・ロードマップの策定
・地元の学生による生徒主体の環境分野の様々な取組
・観光局と連携したサーキュラーエコノミーをテーマとしたカンファレンス
・近隣自治体と連携した広域DMOへのSDGs委員会の設置
観光開発とバリューチェーンの評価
観光地域としての幅広い魅力(例えば、テーマ性のある地域的/全国的/国際的なルート、自然的・文化的価値を共有する集落、自然公園の一部を構成している等)の中への位置づけ
・世界有数のスキーリゾートや登山・トレッキングルートを形成する北アルプス白馬連山
・近隣自治体と10のスキー場が形成するHAKUBAVALLEYというスキーリゾートブランド
・歴史的な風景と田園風景と共に古代米(紫米)を残す伝統建造物群保存地区の青鬼地区
・かつて塩や海産物を運び歴史遺産や信仰の足跡を残す山と海の交流の道「塩の道」
地域の価値を反映した宿泊施設の存在
・囲炉裏などの伝統的な生活様式や自家製の農産物でもてなす小規模農家が営む民宿
・館内の展示物や併設する資料館等で歴史を伝える登山やスキー関係者が営むホテル
・現在も営業を続ける白馬岳頂上にある日本最古の観光用の山小屋である白馬山荘
地域のガストロノミーや伝統的な食文化の推進
・家庭的な民宿による先代から引き継がれた地産地消の伝統的な郷土料理
・地域の食材をふんだんに使った飲食施設
・地酒を作るための、田植え・稲刈りツアーの企画と試飲会
・広域DMOに設けられたガストロノミー委員会によるガストロノミーツーリズムの推進
観光開発とバリューチェーン統合のために地域が実施している政策、施策、取組
・白馬エリアにある10のスキー場を一つのリゾートとして形成する世界最大規模のスキー場「白馬バレー」のブランド化
・白馬バレーの全エリアを1枚のリフトパスで利用できるHakuba Valley全山共通シーズン券の発行
・世界トップクラスのスキーリゾートが連携するEpic Passプログラムへの加盟
観光分野のガバナンスと優先順位付け
・「恵まれた自然、山と雪が育む生活・文化を未来に残す マウンテンリゾート・HAKUBA」のビジョンを掲げる観光地経営計画の策定
・観光経営計画のもとの行政、DMO、観光産業関連事業者が連携した戦略的な観光地経営
・白馬バレーツーリズムによる顧客データや観光白書を活用した、KPIに基づくマーケティング推進と戦略立案
アクセス・インフラ
・長野オリンピック開催に際して整備された幹線道路や、新幹線によるアクセスルートの確保
・東京から直通の特急電車・バス、季節限定の空港からの直行バスの運行
・観光客向け「AIオンデマンド乗合タクシー」の導入→情報アップデート
・白馬駅前の無電柱化による日本アルプスや氷河が見える類い稀な景観形成と、誰にとっても安全で快適な歩行者空間の確保
公衆衛生・安心・安全
住民と来訪者を守るための公衆衛生、安全・安心の確保に向けた体制
・白馬村第5次総合計画への「安心・安全の生活を支える村づくり」や「きれいな水と空気に囲まれる村づくり」の項目の制定
・「白馬村安全なまちづくり条例」や「美しい村と快適な生活環境を守る条例」に基づく、誰もが他人を思いやり、快適で安心・安全な地域社会の実現の推進
自然災害に対する脆弱性を考慮した緊急時計画の策定
・白馬村避難支援プラン、白馬村観光防災マニュアルへの災害時・緊急時の住民および観光客の情報伝達や避難誘導についての策定
・避難所マップや避難所開設マニュアルの整備
・緊急避難場所やハザードマップ、各種防災情報を多言語で発信する「白馬村防災ナビ」アプリの観光客の災害時対策への活用
更新日:2024年12月04日